COLUMN
発達障害の子が何回言っても話を聞かない理由と関わり方
※ この記事は、YouTubeで公開した動画・ショート動画の内容をもとに編集したものです。
「さっき言ったでしょう」「なんで聞かないの?」。子どもが話を聞いてくれないとき、私たち大人がつい口にしてしまう言葉です。でも、その子の中で何が起きているのかを知ると、声のかけ方は変わってきます。
「1回しか言いません」がどれだけ大変か
私がよくお伝えしているワークがあります。「今から指示を出すので、頭の中で覚えてくださいね。集中して、聞き逃さないように。1回しか言いませんよ」。そう前置きしてから、3つのことを同時にお願いします。まず、頭の中で今日の朝ご飯を思い出す。次に、私がこれから言う数字を覚える。そのうえで、右手でグーを作って、左手で3回机をトントンする。数字を言ったあとに「3つ目に7を付け加えて」と足すと、「もう無理」という声が上がる子もいます。
そしてここで、大人がやりがちな言葉があります。「ちゃんと聞きなさい」「1回しか言わないって言ったでしょ」「なんで聞かないの?」「やる気ないのかな?」。自分が言われる側に立ってみると、かなりきついですよね。「いや、無理やん」となってしまいます。
この子は、聞いていなかったわけではありません。むしろ必死に聞こうとしていました。集中して頑張ろうとしていたのに、できなかった。無視しているわけでもありません。ただ、処理が追いつかなかっただけなのです。
聞かないのではなく、聞けない
何度も聞き返す、全然聞いていないように見える。そんな姿から、私たちはつい「話を聞かない子」だと受け取ってしまいます。でも実際は、聞かないのではなく聞けない。聞こうとしているのに、頑張りたいのにできないから、本人が一番辛いのです。
この困り感に気づこうとしないまま、声かけだけで何とかしようとすると、お互いに余計しんどくなっていきます。大事なのは、「なんで聞かないの」と問い詰める前に、一旦立ち止まって「何が理由なのかな」と考えてみることです。
今日からできる関わり方
まずは私たち大人の側が、「これはできなくて当たり前だな」「もしかしたら困っているのかな」と思っておく。その前提があるだけで、かける言葉はずいぶん変わります。
先ほどのワークも、「1番から順番にやってください」と書いたものを見ながらなら、できてしまいます。聞くことが苦手な子にとって視覚的な手がかりが大事だというのは、こういうことです。いくら言葉をかけても抜けていってしまうことがありますし、低学年くらいの子なら、イラストのほうが分かりやすい場合もあります。
音の処理が苦手な子には、「聞こえにくかった?」「分かりにくかったかな?」「書いたほうが分かりやすい?」。そして「メモしてもいいよ」「何回でも聞き直していいよ」。こう言ってもらえるだけで、ちょっと安心しませんか。
聞けないことは、その子の努力不足ではありません。理由に目を向けて、伝わる形に変えていく。それだけで、子どもも大人も、ずいぶん楽になっていくはずです。
この記事を書いた人
村井 泰志(ハリー先生)
株式会社ひといろは代表・発達支援アドバイザー。元小学校教員(8年)。特別支援学級・通級指導教室などで2,000人以上の相談・支援に携わる。プロフィールを見る →

