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発達障害の子がゲームをやめられない理由 ― 取り上げる前に「守れるルール」を作る3つのポイント

発達支援コラム

※ この記事は、YouTubeで公開した動画の内容をもとに編集したものです。動画とあわせてご覧ください。

「ゲームやめて」と言った瞬間に怒り出す。何度声をかけてもやめられない。ルールを決めたはずなのに、結局守れない。取り上げようとすると泣いたり、怒ったり、暴れたり――。こうしたご相談は本当に多いです。ゲームだけでなく、動画やタブレット、スマホでも同じようなことが起きます。

大人からすると「約束したよね」「何回言ったら分かるの」と思いますし、「このままだと依存のようになってしまうのでは」と不安にもなりますよね。ゲームが手元にないと落ち着かない、ずっとゲームのことばかり考えている、やめさせようとすると強く反発する。ここまで来ると、大人の側もかなりしんどくなってしまいます。

この記事では、小学校の現場で通常級・支援級・通級など、さまざまな子どもたちと関わってきた経験をふまえて、発達特性のある子がゲームをやめられない理由と、取り上げる前に作っておきたいルールについてお伝えします。

先に結論:必要なのは「守れる形のルール」

ゲームをやめられない子に必要なのは、いきなり強く取り上げることではなく、守れる形のルールを作ることです。

もちろん、危険な状態になっているときや、生活が大きく崩れているときには、強い制限が必要になることもあります。ただ、「守れなかったから没収」「やめないから取り上げる」という対応だけになってしまうと、根本的には変わりにくいのです。むしろ子どもの反発が強くなり、大人との関係が悪くなって、家庭の中で毎日バトルになってしまうこともあります。

私自身、子ども時代を振り返ると、「このままではよくない」と分かっていても、自分の力だけでコントロールするのはかなり難しかった感覚があります。中学生、高校生くらいになっても、自分で管理するのは簡単ではありませんでした。今は小学生でもスマホやタブレットを使う時代です。刺激の強いものがいつでも手元にある状態で「自分で考えてやめなさい」と言われても、それはかなり難しい場合があります。だから最初から、本人の意思だけではコントロールしにくいものだと思って関わるほうがいいと考えています。

ゲームや動画は、終わりどころが見つけにくい

ゲームや動画は、とても刺激が強いものです。もっとやりたい、勝ちたい、通知が気になる、友達とつながっている感覚がある――こうした要素があって、終わるタイミングがただでさえ分かりにくいのです。

そこに発達特性があると、切り替えの苦手さ、時間感覚のつかみにくさ、衝動性、見通しの持ちにくさ、負けたときの気持ちの調整の難しさなどが関わってきます。つまり、やめる気がないというより、やめるために必要な力がその場でパッと働きにくいと見ることができます。

「突然の没収」がうまくいきにくい理由

こうなると、大人は本当に焦ります。「このままでいいのかな」「依存みたいになっていないかな」「私の対応が悪いのかな」「やっぱり取り上げるしかないのかな」と悩むと思うのです。

しかも、子どもの要求はどんどん強くなっていきます。「もう少しだけ」「あと1回だけ」「みんなやってるから」。そこで大人が折れると、次も同じことが起こる。でも強く言うと大荒れする。そうなってくると、家庭の中でゲームをめぐる空気がどんどん悪くなっていきます。

ここでうまくいきにくいのが、突然の没収です。「守れなかったから今日から禁止」「もう終わり」「電源切るよ」「取り上げるよ」――焦っていると、つい言ってしまうことはありませんか?

事前に本人が納得できるルールがないまま強く取り上げると、子どもにとっては「急に奪われた」と感じられることがあります。もっとやりたい、続けたいという気持ちが強い状態で、それを外から急に止められるので、反応も強くなりやすい。大人が強く反応すればするほど、子どもの行動も強くなっていくことがあるのです。

だから大事なのは、ここまで悪化してから何とかするのではなく、その前に予防的なルールを作ることです。ゲームを完全に悪者にするのではなく、生活の中でどう付き合うのかを一緒に決めていく。守れなかったら叱るのではなく、子どもが守れる形に調整していく。そのためのポイントを3つに分けてお伝えします。

取り上げる前に大切にしたい3つのこと

① 取り上げる前に、やめられない理由を見る
ゲームをやめられないと、大人はすぐに「約束を守らない」と見てしまいがちです。でも、なぜやめられないのかは子どもによってかなり違います。終わるタイミングが分からないのかもしれない。あと少しでクリアできそうなのかもしれない。友達とオンラインでつながっていて、自分だけ抜けにくいのかもしれない。負けたまま終わるのが悔しいのかもしれないし、その後にある宿題や片付けなど、次にすることが嫌でゲームから離れにくいのかもしれません。疲れや不安から、ゲームの刺激に頼っていることもあります。ここを見ないまま「とにかくやめなさい」と言っても、うまくいきにくいのです。

例えば、終わり方が分からない子には、「何時まで」だけではなく「このステージが終わったら」「この試合が終わったら」のように、終わりの形を一緒に決めると分かりやすくなることがあります。時間感覚が苦手な子には、タイマーだけでなく「あと10分」「あと5分」「次で終わり」という段階的なお知らせを、目に見える形で伝えることが必要かもしれません。負けて崩れてしまう子の場合は、ゲームの時間の話だけではなく、負けたときにどうするのかを先に練習しておく必要があります。
② 大人が決めるルールではなく、子どもが守れるルールにする
これがとても大事です。大人が一方的に「ゲームは30分まで」「1時間まで」「守れなかったら没収」と決めて、本人が「うん」と返事はしても、納得感がなければ続きません。もちろん、大人が枠を決めることは必要です。でも、できるだけ本人と一緒に決めていくのが大切です。どのくらいならできそうか。終わるときの合図は何にするか。守れなかったら次はどうするか。こうしたことを話し合っておきます。

ルールは、厳しければいいわけでも、1回で決め切るものでもありません。守れないルールは失敗体験を増やし、「どうせ守れない」「自分はダメだ」という気持ちにつながってしまうかもしれません。だから最初は少しゆるくてもいいので、守れるルールにしていきます。例えば「毎日30分」と決めてそれが難しかったら、まずは「終わりの合図で1回画面を止める」。すぐに電源を切るのが難しいなら、「あと1回で終わり」と自分で言う。それができたらOK、というところから始めていいと思います。目標は完璧な最終ルールではなく、まずはスモールステップ。守れそうなところから経験を積んでいくことがポイントです。

そして、ルールは見える化しておきましょう。紙に書く、ホワイトボードに書く、チェック表にする、スマホのメモに残しておくのでもかまいません。口約束だけだと、そのときの気分で変わったり、すっかり忘れてしまったりします。見える場所に置いて、事前に確認し、終わった後に振り返る。大人が怒って止めるのではなく、ルールを一緒に見る。それだけで、声かけのトーンや頻度も変わっていきます。
③ できなかった日を責めるより、できた日を積み上げる
ゲームのルールは、最初から毎回守れるとは限りません。むしろ、うまくいかない日もあると思っておいたほうが、大人の気持ちも楽になると思います。「また守れなかったね」「だからダメなんだ」「もう没収」と責めるだけになると、次につながりにくいのです。もちろん、約束を破ったときの対応は必要です。でもそれ以上に、できているときにどれだけしっかり声をかけられるかが大切です。

例えば、「今日はタイマーが鳴ったときに1回止められたね」「『あと1回で終わる』って自分で言えたね」「負けて悔しかったけど、物を投げずにいられたね」「昨日より切り替えがちょっと早かったね」。目標が達成できていなくても、こうした声かけを重ねることで、「こうすればいいんだな」「これが“できた”ということなんだな」という経験が積み重なっていきます。

丸が積み上がっていく表もおすすめです。ルールを守れた日、全部でなくても少しでもできた日、前よりちょっとずつできたことが目に見えるようにします。そして、できなかった日も責めて終わりにせず、振り返ります。「今日はどうだった?」「終わるタイミングが分かりにくかったかな」。そのうえで「じゃあ次はどうしたらいいかな」と、毎回作戦を立てていきます。ルールは1回作って終わりではなく、その子の状態や年齢、生活リズムに合わせて修正していくものです。うまくいかなかったらダメ、ではなく、「このルールはまだ守りにくかったんだな」と見直していくのがポイントです。

家庭だけで抱え込まないことも大切です

ゲームがないと落ち着かない、取り上げると激しく暴れる、生活リズムが大きく崩れている、学校生活や家庭生活にかなり影響が出ている――こうしたケースは、家庭だけで抱え込むと悪化することがあります。医療機関や相談機関、スクールカウンセラー、学校の先生、発達相談など、外部の力を借りることもとても大切です。家庭内のルールだけで何とかしようとして限界を感じているときは、こうしたサポートを使いながら立て直していくのも選択肢の一つです。

まとめ

発達障害の子がゲームをやめられないとき、大切なのはいきなり取り上げることではなく、守れるルールを一緒に作ることです。お伝えしたポイントは3つでした。

  • 取り上げる前に、やめられない理由を見る
  • 大人が決めるルールではなく、子どもが守れるルールにする
  • できなかった日を責めるより、できた日を積み上げる

ゲームをやめられない子は、わがままなだけではないのかもしれません。楽しい刺激から離れにくい、切り替えが難しい、時間の感覚がつかみにくい、負けたときの悔しさを整理しにくい、自分だけではまだ管理しきれない――そうした困りごとが、背景に隠れていることが少なくありません。だからこそ、ただ禁止したり没収したりするだけでは解決しにくいのです。どうすれば守れるかを、ぜひ一緒に考えてみてください。

村井泰志(ハリー先生)

この記事を書いた人

村井 泰志(ハリー先生)

株式会社ひといろは代表・発達支援アドバイザー。元小学校教員(8年)。特別支援学級・通級指導教室などで2,000人以上の相談・支援に携わる。プロフィールを見る →

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